2017年11月4日、岐阜県大垣市で開かれたイベント中に、空中から菓子をまいていたドローンが大勢の人たちの中に落下し、子ども4人を含む6人が軽傷をおった事故が生じたことは、まだ記憶に新しいと思います。また、同年2月には神奈川県藤沢市の建築現場で、ドローンが現場の作業員に衝突した事故も報告されました。近年、小型無人航空機が、様々な場面で使われてきている一方、このような事故の報告も増加している傾向にあります。今後ドローンは、調査、研究、流通、娯楽、多くの場面で活用されていく事が期待されていますが、ドローンが安全に航行するために、適切な運用方法や、利用環境の規定、標準装備が整備されていく必要があります。

我々は、このようにドローンが安全に航行、運用されていくための環境構築の一環として、なぜ、どのようにして、そのドローンの事故が生じたのか、その原因を分析、究明するための事故時の環境復元の研究を行いました。ここでいう環境復元とは、ドローンがどのような経路を通ったか、どのように回転、落下、墜落したか、その際の経路周辺の建造物や地形はどうであったか、その状況を復元、可視化することです。

ドローンには、一般にGPSやジャイロ等のセンサーが搭載されています。これらの航行時の記録を読み出し、表示させれば、その経路復元が可能です。また、近年はカメラが標準装備されているドローンも多いので、このようなカメラで撮った画像から、SLAM (Simultaneous Localization and Mapping) 等の自己位置推定と環境地図作成を同時に行う手法を用いれば、周辺環境復元と表示も行えます。一方、カメラのみだと視野が限られるので、レーザスキャナー等も搭載できれば、より広範囲でのマッピングも可能です。図1は実際にドローンの経路と周辺地図を同時に可視化した図になります。このように限られたデータから、なぜその事故が起こったのか分析し、対策していければ、より良い「ドローン社会」が構築していける一端になると考えています。

図1.ドローンの経路と周辺地図。赤と白の線が2台のドローンの経路。地面がレーザスキャナーデータから構築したマップ。この試験では台車に載せたスキャナーで地図を作っています。試験は福島県楢葉市の総合運動公園のグランドで実施しました。

山田 竜平