概 要
(公財)福島イノベーション・コースト構想推進機構が、大学等による浜通り市町村等、他大学等、地域企業等との恒常的な連携体制の形成や特色ある教育研究プログラムの開発・実施を支援することにより、イノベーションを生み出す高度な人材の長期的な教育・育成の基盤を構築することを目的として、2021年度から新たに「大学等の「復興知」を活用した人材育成基盤構築事業」を開始した。
本事業は、2021年度から2025年度までの5カ年の事業となっており、大学等の継続的な教育研究活動を通じて、浜通り地域等の復興に資する人材育成及び地域貢献が期待されている。会津大学では2018年度から「復興知事業」として実施してきた”浜通りロボット人材育成事業”を発展させ、2021年度からはこの事業の採択を受け、“若手人材が輝くロボット・ICT人材育成プログラム”を開始し、様々な人材育成活動を展開している。
※会津大学の事業紹介(PDF)
※会津大学の他に採択となった、全21事業はこちら
目 的
浜通り地域等で、研究・教育機関と連携して若手のロボット・ICT人材を育成するとともに、地元企業等のロボット産業に関する取組の促進、支援を行い、技術力の向上と連携体制の強化を図る。また、地元企業のほか、浜通り地域等への進出企業とも連携し、福島ロボットテストフィールドを活用したロボット産業振興に貢献する。
活動実績
※新型コロナウィルスの影響により、一部内容を変更して行った。
2022年6月25日、26日
大学間連携ロボット・ICT人材育成(兼TA*養成研修)
会津大学、福島大学の学生を演習の講師とすることを目的として、プログラミング演習及びArduinoを活用した小型クローラロボット演習の指導方法についての研修を実施した。双方の学生が講師となるための教育を実施したことにより、福島大学と連携した教育体制を整えることができた。これにより、南相馬市内の高校生等を対象とした各種演習では、講師となるための教育を受けた学生が、積極的かつ丁寧に受講生のサポートを行い、受講生のロボットやICTに関する理解を促進することができた。
*Teaching Assistantの略語。講師のアシスト、高校生の学習支援を行う。
2022年8月29日、30日
ロボットシミュレータ(Choreonoid)研修
ロボット開発において重要となるシミュレーション技術活用のため、東北大学、福島大学、会津大学の3大学によるロボットシミュレータ技術教育を実施した。
2022年7月21日、22日、12月20日、21日、22日(5日間)
Pythonプログラミング演習(原町高校)
ICT技術を持った若手人材の育成を目的として、南相馬市内の高校生を対象にPythonプログラミング演習を実施した。
受講生の大半がプログラミングの経験がないところから、会津大学及び福島大学の学生に質問をしながら、プログラミングに関する基礎知識を学ぶことで、論理的思考力を養うことができた。また、アニメーションプログラミング演習を実施し、演習の最後に各自が作成したプログラムの発表を行うことで、創造的思考力を養うことができた。これらにより、学生等のプログラミングへの興味及び関心の醸成並びに理解の促進をより一層図ることができた。
ICT教育に関してはプログラミング自動採点システムであるAizu Online Judge(AOJ)を活用することで、学生が自主的にプログラミングの反復自習をすることが可能となった。
受講者の感想
「文系選択だが、プログラミングの世界も知っておきたいと思い参加した。
基本的なコードの組み合わせの先に、今の社会が成り立っていると知り、非常に勉強になった。」
「アニメーションのプログラミングでオリジナルのゲームが作れそうで楽しくなった。
2022年7月16日、17日、8月6日、7日(4日間)
Pythonプログラミング演習(相馬農業高等学校・小高産業技術高等学校)
2022年7月2日、3日、9日、10日、8月23日、9月10日、11日、17日(8日間)
若手人材ロボット技術演習
◎7月2日~10日 Arduinoを使用した小型クローラロボットの遠隔操作や自律移動に関する実習
◎8月23日 南相馬市内のロボット関連企業訪問及び工場見学(栄製作所、人機一体、スペースエンターテインメントラボラトリー)
◎9月10日 ロボットシミュレータ(Choreonoid)を活用したロボット操作技術に関する演習
◎9月11日 ロボット(クローラロボットGiraffe、クローラロボットMISORA、ロボットアームJACO Arm)及びドローンの実機を用いた操作・操縦訓練
◎9月17日 福島県ハイテクプラザ南相馬技術支援センターの施設設備を使用した実習
地元企業と連携し、ロボットに関する基礎をハードウェアとソフトウェアの両面から学習可能となるように演習内容に工夫を凝らして実施した。また、南相馬市内に立地するロボット関連企業を訪問し、企業紹介、工場見学を行ったほか、福島県ハイテクプラザと連携した実習を実施したことにより、地域にある企業や産業支援機関とそのロボット関連産業振興への取組の理解を深めることができた。
Arduinoを使用した実習に関しては既製品(市販品の小型クローラロボット)にArduinoを組み合わせる内容の教育を実施したことで、学生が自主的に他の様々な用途に応用することが可能となった。この結果、今年度のロボット・ICT教育の大きなねらいとしていた自己学習が可能な環境を提供することができた。
受講者の感想
「実際にロボットを組み立てたり、地元企業の内部を見学して、技術と知見がより深まった。」
「実機を見たり動かしたりすることで世界でどのようなロボットが求められているのかがなんとなく分かり勉強になった。」
「シミュレータ上でクローラロボットを動かすのが難しかったが、実機では上手に出来た。」
2022年10月6日
高校生課題研究活動支援
原町高校の数科学部の生徒が進めている研究活動に対し、会津大学の学生が基本的な実験方法、実験データの整理方法等について助言指導を行った。
2022年5月18日、9月20日、11月16日
原町高校「総合的な探究の時間」授業における助言指導
福島大学が実施している原町高校の2年生(157名)を対象とした探究学習科目「総合的な探究の時間」に参加し、生徒が行っている研究活動に対し本学教員及び学生が探究課題の設定、情報収集、調査研究、発表資料作成の方法について助言指導を行った。
2022年度復興知事業 各種テキスト・資料
この事業で使用したテキストの一覧は、こちらです。
Pythonプログラミング演習と、ロボット・ICT教育の「Arduinoを活用した小型クローラロボット演習」で使用したテキストを公開しています。
イベント出展・視察等対応
8月ロボテス見学会、9月ロボテスEXPO、10月Out of KidZania in ふくしま相双2022、ロボテス縁日、11月こども未来フェスティバル、12月相馬農業高校生のRTF見学や福島県教育庁の先端技術体験など、秋から冬にかけてのイベント・視察対応を行った。
特に「こども未来フェスティバル」へは、南相馬市分科会参加の大学が共同で出展し、各大学の活動内容を分かりやすく凝縮した展示を行い、地元市民が事業への理解を深める契機となった。また、運営に当たり、各大学の学生らが協力して、会場の設営及び撤収、来場者への対応、意見交換を行う中で交流を深めたことで、今後の協力体制強化に向けて、大変有意義な活動となった。
分科会開催
また、「大学等の「復興知」を活用した人材育成基盤構築事業」において連携市町村を『南相馬市』として取り組む大学は他にも東北大学と福島大学があり、その教育研究活動、人材育成の事業内容について定期的に発表、意見交換を行った。同分科会では、今後それぞれの活動状況などをさらに共有しながら、地域の課題解決や人材育成を含めた地域の活性化に向けてどのように協働していけるかなどを検討、議論していく。
【日程】
第1回 2022年5月11日
第2回 2022年11月19日
第3回 2023年2月3日
【各大学の事業】
東北大学 「福島浜通り地域社会フィールド実証学際拠点の構築」」(PDF)
福島大学「『復興知』の総合化による食・農・ふくしま未来学の展開」(PDF)
会津大学 「若手人材が輝くロボット・ICT人材育成プログラム」(PDF)
所 感
会津大学ロボット事業プロジェクトマネージャー
特任教授 屋代 眞
会津大学では福島県の復興と今後の発展に寄与するために2013年に「復興支援センター」を設立し様々な活動を行ってきています。2018年には南相馬市と連携協定を結び、2019年9月には浜通りの南相馬に会津大学開学以来初めての学外拠点である「会津大学ロボットテストフィールド研究センター」を開設、2021年にはロボットテストフィールドで行われたWRS2020災害対応部門に参加、2022年度には浜通りに設立予定の国際研究教育機構の先行研究に参加、また2023年3月には福島イノベーション・コースト構想推進機構と連携協定を結び、復興と浜通りへの貢献を進めています。
2018年度に福島イノベーション・コースト構想推進機構の支援を受けて開始した「復興知事業」では地元の企業の方々や高校生など若手人材と大学の教職員や学生が触れ合い、南相馬のロボットテストフィールドなどで関連研究機関の教員や学生の交流なども行いながら、地元の若手人材の育成を行い、復興を超えた福島県の未来の創造を目指しています。