大会概要

WRS2025 過酷環境F-REIチャレンジプレ大会
日 程:2024年10月4日(金)~5日(土)※終了
場 所:福島ロボットテストフィールド(福島県南相馬市原町区萱浜字新赤沼83番)
主 催:福島国際研究教育機構(F-REI)
共 催:経済産業省
大会HP:https://wrs.f-rei.go.jp/pre2024/

出場結果

プラント災害チャレンジ出場チーム「MISORA+UoA」

〈最終結果〉2位

〈出場チーム〉全6チーム
  MISORA+UoA(会津大学参加チーム)…2位
  Quix(東北大学)
  Nexis-R(長岡技術科学大学)
  名古屋工業大学レスキューロボットプロジェクトSAZANKA
  TECO Spot Rangers(東北エンタープライズ)
  NITRo(名古屋工業大学)

  公式競技結果はこちら

今回の大会のために開発した技術、ポイント

学内チームリーダー〈大学院修士1年 岩田 塁〉

私たちは、競技タスクに合わせてメーター値読取り、QRコード読取り、金属板のひび検出などの画像処理プログラムや、デジタルツインサーバーへの報告プログラムを作成し、それらをGUIから操作する統合システムを開発しました。
報告する物体の検出や値の読み取り精度が不十分のため、最終的にはプログラムが半自動の形となりましたが、競技チーム内で唯一ひびの検出に成功することができました。
私たちは今年の4月から各処理のプログラム作成を始めました。初めてチーム開発をする学生が大半で、リーダーとしてうまくまとめていけるか不安でしたが、開発経験のあるメンバーからアドバイスをもらい、着実にプログラムの完成に近づきました。

9月からは定期的にMISORA2の開発に携わった南相馬ロボット産業協議会の方々と打ち合わせを行い、ロボットの実態に合わせたプログラムの更新やフィードバックを受けることで、より良いものにしていきました。

大会当日、オペレータとして自分たちの作成したシステムを操作した結果、手動の操作による時間ロスや検出精度の悪さといった課題が浮き彫りになりました。これにより、次回大会に向けたプログラムの自動化や精度向上の必要性を強く感じることができ、各班が次の大会への意欲を高めるきっかけとなりました。
今大会では2位という結果でしたが、本大会では1位を目指して努力していく所存です。


 
 

参加した感想

〈大学院修士1年 長沢 勇希〉

WRSに参加し、多くの貴重な経験を得ることができました。これまでにもソフトウェアの開発やコーディングは何度も行ってきましたが、今回のWRSは今までの開発とは異なり、実機の操作や天候などの外部要因、競技内容が直前まで非公開である点など、通常のコーディングにはない多くの課題がありました。
Webやモバイルアプリケーションの開発では、システムが目的を達成できる1つのアルゴリズムを準備すれば十分でした。しかし、今回のWRSでは、1つのアルゴリズムやプログラムだけでは不十分であり、競技内容が公開された後に、不足している機能の追加や既存機能の変更を行う必要がありました。実機のロボットが実際の環境で動作するため、無限に近い外部要因に対応することが求められたためです。この経験から、変化に柔軟に対応できるソースコードやアルゴリズムを設計・開発することの重要性を強く感じました。
来年は本大会となり、タスクの難易度やシステムに求められる機能は今年以上に高くなるでしょう。例えば、今大会ではタスク完了報告を手動で行うことが許可されていましたが、来年からは自動化が求められるといった制約があります。
今大会での経験と学びを活かし、より高度なプログラムを作成し、上位成績を目指して取り組んでいきたいと思います。

 
〈学部4年 藤井 嵐〉

WRS2025プレ大会に参加し、私は主にプラントチャレンジにおけるQRコード読み取りプログラムの開発に従事しました。このタスクは、プラント環境内のQRコードを正確かつ迅速に読み取る必要があり、予期しない物理的な障害物や環境要因も考慮に入れなければならない、非常に技術的かつ緻密な取り組みでした。特に、曲面に貼り付けられたQRコードの歪みを補正するアルゴリズムの実装は私にとって大きな挑戦でした。
大会全体を通じて、チーム内の各部門がそれぞれの役割を果たしつつ、全体の目標に向かって統一感を持って取り組む様子を目の当たりにしました。特に、リーダーの方々が示した強いリーダーシップには深く感銘を受けました。彼らは困難な状況でも冷静に状況を判断し、チーム全体に的確な指示を出すことで、プロジェクトがスムーズに進行できるよう尽力していました。リーダーの判断力やコミュニケーション能力は、複雑な課題を抱えた状況下でも重要であることを改めて実感しました。
また、この大会では、さまざまな企業や他チームとの交流を通じて、異なるバックグラウンドや視点を持つ人々との協力がどれほど価値のあるものであるかを実感しました。技術的なディスカッションから始まり、異なる視点からのフィードバックを得ることで、今後の開発において新たな視野が広がり、自分自身の成長にもつながりました。
最終的にプラントチャレンジでは2位という素晴らしい結果を収めることができました。2025年に開催されるWRS本大会に向けて、今回得た経験とフィードバックを活かし、技術精度のさらなる向上とより高いレベルの成果を目指していきます。

講評 ~ハード(機体)面について~

「MISORA+UoA」チームリーダー
株式会社クフウシヤ 代表取締役 大西 威一郎

南相馬ロボット産業協議会 ロボット開発研究会の大西です。
2025年10月に実施される「WRS2025 プラント災害チャレンジ」へのチーム福島としての出場を目指して、南相馬ロボ協は会津大と共同研究、試作開発に取り組んでいます。今般、本大会のちょうど一年前にあたる2024年10月にプレ大会が福島ロボットテストフィールドで実施され、私たちはチーム「MISORA+UoA」として共同出場を果たしました。役割分担は、 南相馬ロボ協がロボットやドローンの設計と製作および制御を担当し、画像処理によるメーター読み取りや異常検出、デジタルツインサーバとの通信やUI構築などを会津大チームが担当しました。

特筆すべきは、出場チームのなかで私たちだけがクリアできた画像処理タスク等の成果であり、プレ大会の結果は、会津大のデュアルウェア開発に関する技術力が遺憾なく発揮されたものと感じております。一方で、ロボット実機(HW)の担当としてプレ大会を振り返りますと、強力な足回りや、信頼性の高いアームを有する他チームの完成度の高さを目の当たりにし、本大会に向けて、更なる改良開発、性能向上の必要性を感じているところです。私たちは前回WRS STM競技で準優勝を成し遂げた「MISORA」の設計を大幅に改良し、WRS2025 プラント災害チャレンジに出場するための新たなロボットとして「MISORA 2」を製作しました。ラダーフレーム構造やカーボン部材の採用等による機体の小型化や軽量化、振動減衰性向上、あるいはロボット制御のROS化による各種自律化やロボット姿勢の可視化、デジタルツイン対応などで確かな成果を得たものの、スケジュール面で開発が間に合わなかったハンドツールの開発やアーム操作性や悪路走破性の向上などが来年の本大会に向けた課題です。

これから一年間、会津大&南相馬ロボ協のワンチームで、力を合わせて頑張っていきましょう!

講評 ~ソフト面について~

会津大学 教授 成瀬継太郎

【背景】
私たちはこれまで地上ロボットの災害対応標準性能評価チャレンジ(STM)に参加していましたが、今回はそれが廃止されたためプラント災害チャレンジに参加することにしました。STM部門では遠隔操作技術の正確さなどのロボットの基本技術の評価に重きが置かれていました。一方、プラント災害チャレンジはよりシナリオ型の課題で、ロボットシステムの点検業務の自動化と異常発生時の対応力の両者が求められるものです。このチャレンジに私たちは地上ロボットMISORA-IIと小型ドローンで参加し、会津大学は点検業務のソフトウェアの開発に取り組みました。
【チャレンジの内容】
今回のプラント災害チャレンジでは、測定対象の指示はサーバから与えられ、測定結果はサーバに対して送信します。実際のロボットの動作は、まず指示された測定対象の近くまでロボットを遠隔操作で移動させ、次に測定対象近くにあるQRコードを読み取り指示された対象物と同一かを確認し、その後対象物を測定し、最後にIDと測定結果の両者をサーバに送信します。この一連の過程は手入力ではなく、システムによる自動化が求められています。そして、この過程を複数の測定対象に対して行います。
【このチャレンジの難しさ】
会津大の学生チームはこのチャレンジのためのソフトウェアシステムを開発しました。上の過程のすべてを自動化するのは困難であるため、システムの設計、とくに何をロボットの遠隔操作および画面でのソフトウェアの操作で行い、残りのどの部分をソフトウェアによる自動化によって自動化するかの切り分けがとても重要な課題になります。チームは事前に試験片を用意し、様々な角度や条件で試験片を測定しながら、どのようなアルゴリズムで何を自動化できるかを検証しながら、ソフトウェアの試作を行いました。各項目の難しさを以下に挙げていきます。

(1) QRコード
すべての測定においてQRコードの読み取りは必須です。事前準備ではプラントは狭いためQRコードを正面から観測ないことが多いと仮定し、画像変換によって斜めからの画像でも読み取れるようにしました。さらに照明条件も悪いことを仮定し、コントラストの調整も行えるようにしました。これらはチャレンジにおいて上手く働きました。一方で事前準備していなかった難しさは、パイプの円柱表面に貼られていたQRコードがあったことでした。これは通常のQRコードリーダでは読み取ることができず、またチームが準備した画像変換もこれには対応していませんでした。ここが次回への課題です。
(2) メータ読み取り
チームではメータの丸い部分が与えられたときに、その中の針と数字を認識するソフトウェアを開発しました。これも画像変換を行い、正面以外のときにも対応できるようにしています。一方、カメラ画像の中からメータ部分を発見する機能はソフトウェアのオペレータによって行われていました。このシーンからのメータ部分の自動認識が次回への課題であり、画像処理AIなどの導入による解決が期待されます。
(3) 試験片クラック
別の点検の課題は金属板からのクラック発見です。チャレンジでは競技化するために、200mm × 200mmのアルミの板に人工的に0.5mm以下の細い筋が掘られている試験片があるので、それを発見しクラックの位置と長さをレポートするものです。今回のチャレンジではアルミの試験片はコンクリートの壁に取り付けられていました。両者とも色が似ているため、画像からのアルミの試験片領域の自動抽出は難しい課題であり、ここはオペレータによる手作業により領域を決定しました。ここも次回への課題になるでしょう。一方で開発したソフトウェアのクラック発見の能力は高いもので、今回の大会で最も難しいクラック発見タスクを成功したただ一つのチームでした。
(4) サーバ送受信
サーバへのデータの送受信は、事前の情報公開の遅れや、大会直前の仕様変更などがあり担当者は苦労していましたが、本番では問題なくソフトウェアは動作しました。
(5) 今回行わなかったタスク
今回は準備不足で実施しなかったタスクは試験片の減肉検査です。これはアルミに試験片の裏側が少し薄くなっており、それを表面から計測するタスクです。これはロボットハンドの先端に超音波測定器のプローブを垂直になるようにあて、試験片全体を網羅するようにハンドを移動させ、減肉の値を測定するものです。これは、ロボットハンドにRGB-Dカメラを取り付け、試験片の垂直方向を計測し、それがプローブの垂直方向と一致するようにロボットハンドを制御することで実現されます。本大会ではこのようなロボットハンドの制御にも取り組んでいきたいです。

Photo Gallery

    


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大会の様子

プラント災害チャレンジ 1日目(2024/10/4)

プラント災害チャレンジ 2日目(2024/10/5)