会津大学でWorld Robot Summit2018に出場したことは本コラムで伝えておりますが、今回は出場するまでに準備したこと、苦労したことなどを紹介します。
ホテル手配
WRS2018は10月17日から21日の間の開催でしたが、出場者は10月15日から現地入りしていました。事前にビジネスホテルなどの手配をし、東京ビッグサイト付近の数か所のホテルを確保しました。20名超の大所帯の中、最短で3泊4日、最長で7泊8日、近めのホテル、少し離れたホテルなどの組合せをパズルのように行い、それぞれがホテルを間違えないよう伝えるのもちょっとした苦労でした。チェックインで苗字(漢字)の読み方の違いによりあやうく宿泊できず…の人が一名。フリガナの必要性を感じました…
OSが…
出場するE2 SPIDERと名付けられたロボットを動作させるために使っていたPCのOSはUbuntu14.04LTSでした。PCのスペックアップなどの目的で新しいPC、Intel(R)NUCキット NUC7i7BNHを購入しましたが、PCが新しくUbuntu14.04LTSがインストールできず、Ubuntu16.04LTSをインストールしました。
OSはUbuntu16.04が入った、しかし…LANが動作せず!
新しいPCには、適合しているUbuntu16.04LTSがインストールされました。しかし、有線無線ネットワークを認識せず、試行錯誤、ネットなどの情報を基に、HWEカーネル(低遅延カーネル Real-Time-Kernel)を導入し無事LANが動作しました。
LANは動作したが…コントローラの動作が違う、そしてRTコンポーネントの挙動も違う…
HWEカーネルの導入で無線LANが動作しました。しかし、このHWEの導入が原因でロボットのコントローラとして使っているDualShock4の情報のやり取りが異なることが判明しました。これはds4drvの導入で解決しました…が、今度はRTコンポーネントがUbuntuのバージョンにより挙動が異なることも判明。マジックナンバーを修正し対応しました。
本番ではノートパソコン…Intel(R)NUCでできたことができない…様々なことを解決
本番ではIntel(R)NUCではなくDellのゲーミングノートパソコンAlienwareを使うためシステムを載せ替えました。しかし…Intel(R)NUCでできたことが、Alienwareではできないことが多く、都度、調査を行い改善しました。またAlienwareではフリーズが多発していました。様々な調査を行い、純正ケーブルを使用しないと充電できないことがわかりました。
ここまで簡単に数行で書いていますが、情報が少なかったため、数か月単位で苦労しています…
いざ!World Robot Summit2018!
ここまでの数か月の苦労はこれに出場するためです。実機やシミュレータ(Choreonoid)で練習も重ね、本番にむけての準備は万全です。戦略は「限られたリソースで最大の点数を取る」。指示出し、メンテナンス、オペレータ、ケーブル管理、アリーナ(競技会場)への搬入・搬出と担当を分け、さらにタスク毎にオペレータを分担する体制をとり、それぞれがスペシャリストとなり、タスクの状況に臨機応変に対応できるようにしました。また、チャレンジするタスクを絞り、そのタスクで多くの得点をとれるような作戦で挑みました。結果、予選で敗退(※敗退チームの中では最高の得点)してしまいましたが、これまでの苦労と練習が実を結び、戦略通りの得点を獲得することができました。
(中村先生が作った資料や話を基に荒川が文章を作成しております)
トンネル部門:リーダー小川先生
当初はSpiderモデルで手先の器用さをウリにした作業だけをこなすつもりでいました。しかし、実際の事故現場を想定した環境は甘くなく、Spiderだけではそもそも作業を始めるまでが大変でした。そこで、わたしたちは力のある建機ロボットを一緒に使うことに決めました。
実はこの方法はわたしたちにとって遠隔操縦デモの経験がある「援竜とスパイダーの連携」の構図と近く、大変馴染み深いものでした。
経験があるとはいえ、技術的にはまだまだ未成熟なロボット連携です。
わたしたちはソフトウェア的にサポートするため「ゲームコントローラ」を使って「ロボットの運動をゲームのキャラクターのように簡単に動かせる」逆キネマティクスという要素技術を組み込みました。
本番では操縦への不安は軽減されたおかげで、大きいロボットが小さいロボットをつまむ、便利な道具を作成するなど、戦略を練ることができ、見事優勝できました。小川先生曰く、「実世界ではあきらめてしまうこと、ありえないことにチャレンジすることがシミュレータの最大の意義であり、ここで生まれた技術の発想は、いずれ未来の技術になるだろう」とのこと。ソフトウェア的な技術もさることながら、オペレータの操作技術、発想、そして大会に挑む練習、チームワークで獲得した優勝です。
大会期間中も、お酒も交え(?)感想戦を繰り返して、次の日の挑戦に備えたそうです!お疲れ様でした!
(このコラムは小川先生と協力しながら文章を作成しました)
株式会社FSK 産業システム部
荒川 弘栄